Nocturne
「まぁいい。これでわかったか?…樹里さん」
何とも高そうなスーツを翻【ひるがえ】し、私の方を向く匡仙さん。
「え…」
「…そこに居る愚息…皇は、親の言うことも聞かないほど貴女に本気らしい」
「…あの…」
いきなりのことで、頭回らない。
それはどういう意味?
つまり、私が思っているように解釈したらいいの?
「…あの日、貴女にああ言ったのは、どれだけ貴女が皇のことが本気だったか知りたかったからだ」
「…」
「知ってのとおり、この高柳財閥という、其処らへんの企業とは違う。
世界に股を掛ける、時に世界経済の中枢を担うほどの大財閥だ。
…そんなところに、一般人の小娘が、『好き』だとかいうそんな気持ちだけで入ってこられるなど論外。
わかるな?樹里さん」
それは痛いくらいに、