Nocturne
「…あのね、皇」
だから、
「…ん?」
どうせ嘘を吐くならば、
「…私、もう疲れちゃった…」
中途半端な嘘じゃなくて、
――――最悪な嘘を吐く。
あなたの心から、忘れ去られるように。
「…どうしたんだ、樹里…?」
「もう、あなたのことには疲れちゃったよ…」
「…樹里…?」
「…だから、」
ごめんなさい、皇。
ごめんなさい、皇。
私は、
「…別れて欲しいの」
私の人生において、最大の嘘を吐く。
君の心の中に、残らないように。
…残れないように。