Nocturne




「珍しいね、竜也が…」

「姉貴」

「…もう、どうしたの?ん?お姉様が恋しくなった?」




冗談交じりに笑っていると、



「ヘラヘラ笑ってんじゃねぇよ!」




竜也はいきなり怒りだした。


…竜也の怒鳴り声、久しぶりに聞いた。

…何、何。
何事なの…?

そう思っていると、



「…ッ、辛ぇんだろ…?姉貴…」




私に『辛いんだろ』と聞いてるくせに、どうしてだか竜也が苦しそうな顔をしてる。



だから言いたくなかったんだよ。

特に、―――竜也には。


あんなに皮肉ばっかの弟だけども、人一倍のお人よし。


竜也はいつもこう。
幼いときからずっと変わらない。

私が悲しいのに、何故だか竜也が泣いてるの。


私の親友が転校した時。





『うわぁぁぁんっ』

『何で竜也が泣いてるのよぉ!あたしが悲しいのに!』

『だって…ッだって…!』

『竜也が泣いちゃうから、あたし泣けないじゃんっ』

『うわぁぁんっ、ごめんなさぁいぃーっ!』





だから、竜也は憎めなかったんだ。
いつも竜也は、私を笑顔にしてくれたから。

この後も、



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