Nocturne




『泣きやんでよ!…んもうっ。
仕方ないなぁ、じゃあ、帰りにアイス買って帰ろう』

『え!アイスぅ?!』

『“アイス”に釣られて涙が引っ込むとか、都合良すぎ!』

『へへっ』

『まさかそれ狙ったんじゃないでしょうね?』

『ふふーっ』




あんな可愛いころもあったな、と思い返す。

もう今は違う。
そう思っていたのに。

でも、どうして知られたくなかったんだろう。




「…もう。どうしたの、竜也」




竜也も、私もおかしい。

どうかしてる。




「辛いなら、泣けよ…」

「え?」

「無理に笑うなよ…」

「…たつ…」




『竜也、今日おかしいよ?』と言おうとした。

すると、
――――竜也に抱きしめられた。


普通、こんなことない。
おかしい。

年頃の姉弟間で、抱きしめ合うなんてこと。


―――でも。
私は分かってた。




「…ッ、何か、冗談でしてるの?」




これは冗談なんかじゃなくて、本気で竜也は心配してるってこと。




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