Nocturne
「…ごめん…」
私はすぐに回した手を離した。
…ダメ。
ダメだよ。
私は優しさに甘えちゃ、行けないんだから。
「…姉貴」
「…私は平気。
だから、早く着替えてきな?準備しないとまた遅刻するよ」
そう言うと、私は逃げるように部屋の中に入った。
背中にはドア一枚隔てて、『姉貴!』と呼ぶ声が聞こえる。
それを無視することは、痛かった。
私を心配して、比較的朝が弱い竜也が私の部屋に来たんだから。
だけど、私は。
…皇にしか甘えないと、決めたんだ。
今、ここで。
皇の傍に居れるまで、私は誰にも、絶対に甘えない。
甘えることは、絶対に許さない。
それが、私の償いだと思ってるから。
「…頑張ろう」
私は制服に身を包み、スクールバックを持って、下に降りた。