Nocturne
「…そうですか」
「…私、用事があるので失礼してもいいですか?」
横を通り過ぎようとした。
―――でも。
「…まぁ、そう焦らずに。
いつもより早く家を出られたのでしょう?更に。」
ということは、普段の私の登校時間を知っていないと言えない事。
…まさか。
「…着けていたんですか?」
「…まぁ、そんなところですかね」
…皇の、お父様がそうしていたのだろうか。
そうとしか、考えられない。
…ならば、相当私は信用が無いみたい。
「皇の、お父様に伝えておいてください。
―――『私はもう、あなたとの約束を守った』とね」
「ほう。約束…」
「…あなたも秘書なら知っているのでしょう?
私と皇が付き合っていることを快く思っていなかったこと」
「…」
知っているのか、知らないのか。
金光さんの心の中は見えないから、私にはわからない。
でも。
「私、自分で自分が許せないんです」
「…許せない?」
「…私が、皇と付き合ったばっかりに、親に…迷惑をかけてしまったこと」
どうしてなんだろう。
ペラペラと、口が動く。
「私が、私の思うがままに動いてしまったから」