Nocturne




つい、何分か前に会ったばかりの、金光さんに。

竜也にも、勿論親にも言えなかったことをこんなにも、金光さんにはペラペラと話してしまう。


それはきっと、
――――誰かに言いたかったから。

この心の中に閉じ込めておかなければならない、鉛【なまり】を。

誰かに、ぶちまけたかったんだ。




「私は、ただ、傍に居たかっただけなのに…」




ぽろぽろと。

涙が知らず知らずのうちに、流れてく。
もう、たくさん泣いたのに。




「最後に、『頑張って』としか言えなかった…」




『頑張って』だけじゃない。

もっとたくさん。
たくさん、たくさん、言いたいことはあったのに。


『体調には気をつけてね』とか。
『大学や仕事頑張ってね』とか。

―――『またね』とか。


そうしたら、“友達”で。
皇にまた、再び会えるのに。

“彼女”とか、“彼氏”とか。

そんなのじゃないけれど、会えるのに。




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