Nocturne
頑張ったって、皇は“皇の隣に立つべき人”と結婚して、私となんて会えないかもしれないのに、頑張ったって意味がないんじゃないか。
頑張ってももう二度と、皇には会えないんじゃないか。
マイナス思考ばかりが頭の中に浮かんできて。
「私は、無力だから。
皇みたいに、家柄も地位も、才能も、魅力も、何もないから…」
自分を卑下するようなことばかりが口から零れてくる。
…こういうことをすることを一番、皇は嫌っていたのを知っていながら。
「それは違うんではないですか?」
「え…」
「…皇様はいつも仰られていましたよ。
『樹里のような、陽だまりのように心が暖かで、“高柳”という家名【なまえ】に対して下心がない人間は俺の周りにはいなかった』―――と。」
初めて聞くことに、私はビックリした。
…皇が、私のことをそんなふうに言っていたなんて、知らなかった。
「確かに貴女は無力です。
誰かに守ってもらわないと、まだ右も左も分からない無知な貴女はまだ生きてはいけない」
金光さんがズバリと言い放つ。
…それが事実な事が凄く悲しくて、私は唇を噛む。
…言い返せないのが、すごく悔しい。