Nocturne
立ち去った後で
BMWの車窓【しゃそう】をコンコン、とノックするのは、
「…皇様」
金光だ。
「…な?言ったろ?アイツはイイ女だ」
BMWの革張りに足を組み、手摺に肘をつき、自分のことかのように得意顔で言う彼。
それは、樹里の愛しい彼。
高柳財閥御曹司―――皇だ。
「…その様ですね」
「It's the way I’m feeling I just can’t deny…ね」
英語が苦手だった樹里が…と昔を懐かしむような声を出す皇。
それが皇が樹里に会っていない月日の長さを物語っていた。
「直訳すると、【この気持ちを否定することはできない】…ですか」
樹里様らしいですね、と笑う金光。
皇は、この短い時間の中で何を知ったのかと言いたくなる衝動を抑え、
「だな」
肯定した。