Nocturne
そう。
何故ここに居るのか。
樹里に別れを告げられた後。
皇はすぐにアメリカからフライトプランを出し、日本へと来ていたのだ。
どうやって?
そんなの、“高柳”という家名を使えばすぐだった。
誰よりも“高柳”という家名を嫌い、その家名を利用することを嫌がっていたのは皇だ。
だけど、樹里の事になるとそんな事、どうでも良い事に変わる。
…“高柳”と言う家名と“樹里”。
どちらが大切かと聞かれたら皇はすぐにこう答えるだろう。
―――――「勿論、樹里だ」と。
それほどまでに樹里を愛し、樹里のことを考えている皇でも、今回のことは予想外で、凄くショックを受けていた。
『別れて』