Nocturne
切なく、重く。
圧【の】し掛かる事実。
「愛してる、樹里にはそれだけじゃ、足りなかったんだな…」
儚く、呟く皇。
届きはしない。
どんなに想おうと、どんなに張り裂けそうなくらい言っても。
君には、
――――一度離してしまった君には、もう会えないかもしれない。
「樹里…樹里…愛してる…ッ」
樹里よりも、皇の方が樹里にハマっていた。
もう、心も何もかもが樹里を求めている。
金光と話しているのですらも、やきもちを焼いてしまうほど。
嫉妬心でいっぱいだった。
いくら愛しいと叫んでも。
―――もう手のひらには戻らない。
その事実が、皇の心を苦しめた。