愛してるとか。
さゆりっ、隣で拓郎がわたしを呼ぶ。
フルシカトを決め込んでわたしは真っすぐ前を見た。
「神山さん、返事くらいしてやれよ?」
目の前に歩み寄る人影に、下から見上げるように視線を合わせるわたし。
「……誰」
同じクラスの人?
そう思っても思い出せないことが多いからわたしは黙っていた。
「同じクラスの三上良介(ミカミリョウスケ)!オッケー?覚えた?」
「覚えられない」
――この良介という人がわたしを変えることになる。
それをわたしはまだ知らない。