タイトル未定

「本当のところ、どうなんだね?」
 東京本社での最後の日、私を応接室に呼び出した人事部長が、声を詰まらせながら今更のように尋ねてきた。
 聞いたところで何になるのだろう。証拠はなくとも、火のないところに煙は立たない。
 私がもう今日しかココに居ることが出来ないという事は、そう判断した、という事だ。
「どういう意味でしょうか?」
 その言葉に苛立ちを隠せずに、皮肉めいた言葉を返してる自分が、そこには居る。
「いや、……だから、君と……大西君との噂というのは」
 私の言葉に、人事部長はさらに言葉の先を詰まらせている。
「今更、お話しする事はありません」
 私は無意識に答えを吐き出していた。
「噂は噂ですが。……どうぞ、ご想像にお任せします」
 そう告げると、私は応接室を後にした。
 弁解も真実も今更、どうだっていい。
 だって、もう終わった事。
 終わりなのよ。
 これまでの関係も、彼の気持ちも、私の気持ちも……。


< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

課題小説

総文字数/3,433

ホラー・オカルト9ページ

表紙を見る
また来世で会いましょう 〜恨みの枷〜

総文字数/2,470

ホラー・オカルト6ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop