お義兄様は官能小説家?!(仮)
「…何、これ…」
そのあまりの内容に、あたしは思わずそう呟いた。
だってこんなの…絶対おかしいよ。
それは、所轄「官能小説」だった。
ジャンルとしては一応知ってはいるが、まさかお義兄ちゃんの小説がこんなエッチなものだったなんて…!
しかもよりいによって、妹ものの近親相姦だ。
あたしは自分の仕事も忘れて、呆然とその場に立ち尽くしてしまう。
…いつお義兄ちゃんが帰ってくるかわからないことを、すっかり忘れて。
「…そこで何してるの、亜梨香」
「…ーっ!」
低い声が、静かに響いた。
それにはっとして顔を上げると、部屋の入り口に無表情のお義兄ちゃんが立っていた。
「…お義兄、ちゃん…」
いつもあたしに微笑み掛けてくれる、お義兄ちゃん。
そのお義兄ちゃんが、真顔であたしを見ていた。
「亜梨香…何で、ここにいるの?」
口調こそいつもの感じだけど、その表情はまるで別人で。
あたしは思わず後ろへと後ずさる。
でも当然、あたしの後ろは机だ。
すぐに追い詰められてしまって、机とお義兄ちゃんとの間に挟まれてしまう。
「…っ」
怖い。
上手く言うことの出来ない恐怖が、あたしの身体を強ばらせる。
「…答えて、亜梨香。何で僕の部屋に、君がいるの?」
静かな声は、けれど有無を言わせない口調で、あたしを追い込んでゆく。