お義兄様は官能小説家?!(仮)
ー謝らなきゃ。
そう思うのに、あたしの身体はまるで蛇に睨まれた蛙のよに縮み上がってしまって、上手く動かすことが出来ない。
「…とりあえずそれ、返してくれる?」
「……あ…」
お義兄ちゃんはそう言って、あたしの手から半ば無理矢理用紙を奪い取る。
「…それで?いい加減僕の質問に答えてくれる?」
それを机の上に乱暴に置くと、お義兄ちゃんはイライラした様
子でそう言う。
「あ…の…あた、し……」
そんなお義兄ちゃんの様子に脅えてしまって、上手く説明することが出来ない。
「…はぁーっ…もーいいや。これ、見ちゃったんだよね?」
お義兄ちゃんはそんなあたしの様子に大きなため息を吐くと、目の前に紙を突き付けてくる。
「う、うん…」
「じゃ、もう猫被んなくていっか」
「え?」
ボソリと呟かれた言葉に思わず聞き返すが、お義兄ちゃんはそれに答えずににこりと綺麗に笑った。
ーそして。
「オレに協力してよ、亜梨香」
お義兄ちゃんはその笑顔のまま、それに似付かわない言葉を響かせた。
優しかったお義兄ちゃんが、豹変した瞬間だった。