俺様天使とのキスまであと指輪一個分。


いつの間にか止んだ雨のせいで、そのセリフは、よりクリアに蒼の耳に届いてしまった。



風が吹いて草がざわめくこともない。

ようやくの日差しに鳥たちが羽ばたく音もない。



ごまかすものが一つもないのは、きっと、自然が蒼に逆襲しようとしているに違いなかった。


「どうして………」

「膝を壊してさ。前からおかしかったんだけど、もう結構ヤバイみたい」

「そんな…でも…サッカー推薦が決まったって……」


冷静に話す啓太よりも、蒼の声の震えが止まらない。


< 194 / 353 >

この作品をシェア

pagetop