俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
「アンちゃん、私、地球に帰ったら、沢山の人に私の歌を聞いてもらうにゃ。みんなを元気にしたいからにゃ!」

「うんっ!」

黒く塗りつぶされた空が、千鶴にとっては明るい日が差し込んでいるように見えた。


(そういえばリョウも私の歌を褒めてくれたっけ)


ふと、リョウを思い出した。


「ん?」


千鶴の腕に絡めていたアンの手の力が弱まった。

アンは気持ちよさそうに寝息をたてて眠っていた。


千鶴はアンを起こさないようにそっと抱きかかえた。

千鶴の細い腕でも感嘆に持ち上がるほど、軽くて小さい。


一緒にベッドに寝転がると、力尽きたように千鶴もまぶたを閉じた。




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