俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
「ねえ…本気でこんなとこ登るわけ…?」

ずれ落ちるメガネを指で押し戻しながら、美津子は悲鳴を上げた。

「もうだいぶ古い階段だからな。錆び付いてるかもしれないから気をつけろよ」

美津子の嘆きなどお構いなしに、フレンはもうすでに階段に足をかけていた。



階段を踏みしめるたび、金属が擦れる嫌な音が響く。

非常用の簡単な階段特有の角度と狭さが、更に体力を奪う。


「こんなことなら学校の体育、真面目に受けてればよかったわ…」

手すりに必死にしがみつく美津子。

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