俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
「父上ぇぇぇーっ!!!」
遠ざかる父の影に、フレンはありったけの声を張り上げた。
しかし、ただ距離が遠のくばかり――
フレンが肩を落としていると、後ろにいた護衛から悲鳴が聞こえてから掴まれていた手が緩んだ。
フレンが振り返ると、鋼の剣を振りかざしたリョウの姿があった。
「グレイス兄さん!」
「リョウ…お前…」
ようやく追いついた三人は、その光景に目を丸くした。
「兄さん?」
フレンとリョウは力強く握手して笑いかけた。
「リョウ!」
慌てて駆け寄る王女に、リョウは剣先を向けた。
「私に…実の母に剣を向けるとは何事ですか!」