俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
とある小さな村。

細々と農家をしてその日暮らしをしていた日々――


父は早くに亡くなり、母と子、二人だけで貧しくも一生懸命に生きていた。


五年前――


いつものように野菜を売り歩いて、小さな村にたどり着いた。

「あっ…母さん…人が」

道端に年寄りのじいさんが仰向けに倒れていた。

話を聞くとお腹が空いたというので、売れ残りの野菜を少し分けてやった。


「お礼に、あのワゴンにある本をどれでも持っていきなされ」


じいさんは、僕たちと同じ、古本を売り歩くのを商売としていたらしかった。

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