俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
その速さで、いつもの道とは反対側の、人通りが少ない狭い路地へと進んだ。


『行き止まり』


の看板をひょいと飛び越える。


そこは雑草が生い茂る森の中で、夜のような黒の世界が広がっている。

もう完全に木々と虫だけが周りを囲んだところで、蒼は足に力を込めた。



ざわっと草がなびく。


その風にスカートをひるがえしながら、蒼はすでに空高く浮かんでいた。

小さな水たまりのようになった先ほどいた森を、静かに見下ろす。



普通なら考えられない状況に


「良かった……夢じゃないんだ……」


蒼は、安堵のため息を漏らした。


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