俺様天使とのキスまであと指輪一個分。
身体をくねらせて発狂する姿は、いつもの美津子からは想像すら出来ない。


「はっ…! いかんいかん。原稿仕上げなくっちゃ」


右手でメガネの位置を整えてから、テキパキとあっちの棚、こっちの引き出し、と作業準備を始める。

学習机に漫画の原稿用紙を広げて、いざ、とペンを握り締める。




が、そのままの姿勢で固まったまま、溜め息とともにペンを投げ捨てた。




「ばっからしい。今の時代にアナログで漫画を描くなんて。やーめ」



背もたれに寄りかかりながら、窓から見える雲の流れを目で追う。



「こんな夢……」






< 91 / 353 >

この作品をシェア

pagetop