はなこさんのみせ〔完〕
グルメレポーターばりに頭の中で妄想を描いで口元が緩む。


「元気になってくれた?」


不意を付く副店長さんの言葉に、私は一気に現実に引き戻された。

あまりのことに返事もできずに、副店長さんを見た。

急に妄想してしまった恥ずかしさもあったけれど、そんなことよりも。



私がどうして学校を飛び出したのか。

この人は知っているのかな。

知るはずなんてない。



「このお店に入って、いい香りがしたでしょ」

話を逸らされた。

私は、ただこくんと頷く。

「アロマオイルをこの芳香器で焚いていたのよ。加湿器にもなるし、一石二鳥」

「……この香り……好き」

「アロマの香りって、人によって好き嫌いが様々。今必要なアロマオイルの効能を、体が欲しているから。臭覚って人間の一番直感的で原始的な感覚だからね」
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