はなこさんのみせ〔完〕
ミチシルベ
私がしなければいけなかったこと。

それは他人に何かしてもらうことじゃなくて……

自分自身を受け入れることだったのかもしれない。


アロマオイルの香りを、鼻が、皮膚から毛穴から全身が、欠けたものを満たすように取り入れるように。


「大丈夫、です」

泣きそうになって、ちょっと鼻声になっていたのを私は頑張って答えた。

ゴロゴロと喉を鳴らしてはなこさんが私に擦り寄る。

意外と可愛いところがあるじゃない。


「アロマテラピーってね」

副店長さんはゆったりと語りかける。

「自分の求める香りを探すことで、自分自身に問いかける心理療法なの。自分を知ることって怖いけど、アロマが手を貸してくれる。ほら。人の助言ってたまにウザイときがあるじゃない?」

副店長さんは人の心が読めるのだろうか。

「にゃあ」

はなこさんが、返事するように鳴く。

何度見ても、はなこさんは猫というよりも毛の塊だ。

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