はなこさんのみせ〔完〕
暫くぶりに雨のない世界。

泳いでいたプールに上がったときのような、ずっしりとした重さを感じる。
 
そして、べちょべちょに貼りついたスカートの妙な膨らみ――


「やば……」

スカートのポケットに入っていた携帯電話を恐る恐る取り出す。

水没した場合、あまり触らないほうがいい、と友だちが言っていたっけ。


どうせ誰からも連絡ないくせに、どうしてスカートのポケットなんかに。


ほとほと自分に嫌気が差す。


深いため息とともに、嵐のような風景をぼんやり眺める。

携帯電話が使えない雨宿りなんて、数学の授業並に退屈だ。

手持ち無沙汰に落ち着きなく目を泳がせていると、背後のガラスウィンドウに写る人影と目が合った。

「だいっきらい!」

雨で汚くなったもう一人の瑞穂を、私はきっと睨みつけた。




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