ママが女に戻る瞬間(とき)
「初めまして、長崎恵美(ながさきえみ)と言います」


「初めまして、永田明菜です」


恵美は明菜を下から上まで眺めた。


そして口の端がふっと上がった。


明菜はその行動を見逃さなかった。


『なに、この人』


明菜の心がざわつく。


「部長にはいつもお世話になっています」


「こちらこそ主人がいつもお世話になっています」


「じゃあ、これから営業だから行くな」


孝一が明菜へ言った。


「奥様失礼いたします」


「失礼します」


明菜は二人の背中を見つめていた。
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