ママが女に戻る瞬間(とき)
「はい、餃子です」

明菜はテーブルへ置く。

「奥さんすごく料理が上手ですね」

「結婚っていいですね」

孝一の部下が代わる代わる褒めた。

リップサービスと分かっていても明菜はうれしかった。

「本当に奥様お料理上手です」

恵美が話しに乗ってきた。

同じ言葉でも恵美が言うとカチンとくる。

「あっ!そうそう………」

そう言いながら恵美が席を立つ。

お財布と携帯しか入らない鞄ではなくて

一緒に持ってきたトートバッグの方を

ごそごそと何か探し始め出した。

「昨日作ったパウンドケーキなんですけれど良かったらどうぞ」

恵美は明菜に渡した。

「さすが女の子」

「恵美ちゃんが作ったの」

「すごいね」
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