ママが女に戻る瞬間(とき)
孝一が明菜の方を見て声をかけた。

「ママ、魚やいてるの?」

「あぁ、うん。さんま」

「あの魚屋のさんま?」

「うん。そうだよ」

今日初めて孝一が明菜へ向かって笑顔になった。

「ママ偉い」

『またまたママかよ!』

明菜は富士山の上で絶叫したい気分になる。

『私はあなたのママじゃない~!!!」

そんな明菜の気持ちを知りもしない孝一は

「あのさんまうまいぞ。そこを食べたら他を食べれない」

「そうなんですか!」

「へー」

「今日はおいしいものばかり食べられてうれしいな」

恵美は孝一の顔を見つめている。


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