聴こえる



3.ネジを投げたのは






「じゃあここー…宮嶋!」


「…っはい」




不意に名前を呼ばれ、反射的に立ち上がると周りからはクスクスと笑う声がした。今は4時間目で数学の時間だ。どうやら私は問題をあてられたらしい。



「……わかりません」


「あ?声小さいぞー」


「……」


「もういい、座れ。じゃあ高木」





こういう時、本当に自分が嫌になる。もっと大きい声でもっとハキハキと喋る事が出来たらどんなに楽か。私の代わりにあてられた高木君は私のことをチラと見た。


うぅ…なんだか申し訳ない。



というかそもそも、藤木先輩が悪いんだ。いきなり部活勧誘からの半強制的に入部。そりゃパニクるだろう。しかも、今日から活動させられるのだ。『終わったら迎えに行くからね〜!』とにこやかな顔で去って行った。


そういえば部員のあと1人は誰なんだろう


そんな事を悶々と考えているとチャイムが鳴った。



ああお昼だ。また中庭で食べようかな。



そう思い、立ち上がると教室の扉が大きく音をたてて開かれる。嫌な予感がした。


扉を開けたその人物は、藤木裕也。いきなり3年生が現れたので、クラスメイトはざわめきたつ。そして私は顔が自然と下に向くのがわかった。



「宮嶋美咲はいるか?」



え、てか終わったら、って4限がってことだったのね。


藤木先輩は扉の近くにいたクラスメイトに声をかけた。

クラスメイトは困惑したように言った。



「宮嶋…って誰だっけ…」


クラスメイトは周りを見渡した。すると、先程私の代わりにあてられた高木君が席をたち、私の前に来て言った。



「宮嶋ってお前だろ」



彼は一言そう言うと、私の腕をつかんで先輩の前に引っ張っていった。



え、てか何で高木君?
ちらりと顔を伺うと、彼はこう言ったのだ。



「部長、今朝はネジ投げてすみませんでした」


















3.ネジを投げたのは






高木君だったんだ!



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