嘘とメールと夏休み
俺の心臓は、バクバクと音を立て始めていた。
やっべえ、俺絶対死ぬ。
これ、椎名んとこ行っちゃうの?
俺のにしちゃ、駄目?
「あ、そろそろ行かなきゃ」
鮫島がぽつりと呟く。
鮫島を引き留めようと思った。
「お、行ってこいよ」
なんてことのないように、俺は言う。
本当は引き留めたいけど。
「うん。あ、着付けありがとうございました」
「あらあら、いいのよ。行ってらっしゃい」
おじゃましました、といつもより丁寧にお辞儀をして彼女は玄関に向かった。