嘘とメールと夏休み
鮫島とは2年生に同じクラスなってから知り合った。
鮫島と俺の名字の椎名で、席は以外と近かった。初めて見たときの印象は、綺麗な子ということだった。
もちろん見た目だけでは終わらず、彼女の行動そのものが綺麗だった。
クラスにいるキャアキャア騒ぐだけの女子とは比べものにはならなかった。
「椎名奈穂?」
彼女に初めて名前を言われた時、ドキンとした。俺のこと呼んでいるのか?配布物として、彼女は俺の理科のノートを持っていた。
「ねえ、このクラスに奈穂ちゃんなんていたっけ?」
彼女は、近くにいた女子に聞いた。近くにいた女子はクスクス笑いながら、「やだそれ、椎名君だよ」と言った。鮫島は驚いた顔をして、俺を見た。申し訳なさそうにノートを渡しながら謝った。
「ごめんね、椎名君」
許すもんか。当時の俺は、鮫島を軽く睨みつけた。それに気付いた鮫島は、しゅんとしていた。ちょっと心が痛んだけど、失礼なのはそっちだろとでもいうように大きな咳払いをした。