大海の一滴
TATUYUKI
ハアー。
藤川達之は口を窄め小さく溜息を吐いた。
留守電にはやはりメッセージが残されている。内容はおおよそ見当が付いた。だからこそあえて出なかったのだ。
仕方なく再生ボタンをプッシュして、薄い受話器を耳に押し当てた。
「メッセージを、再生します」
丁寧で事務的な女性の声の後、低音でいかにも深刻そうな男の声が喋り出す。
五十嵐剛、四月に雇った契約社員である。
「あ、五十嵐です。佐藤さんの件でちょっと話があるんですけど。宜しくお願いします」
プツ、回線は手早く切られ録音は終了した。
(まずはお疲れ様ですだろ?)
達之はもう一度溜息を付いた。