大海の一滴

TUKIKO's Story


 私は子供の頃、先天性の肝疾患を患っていて、何年もの間入退院を繰り返していました。



 私の家は母子家庭ですがお金には困っていませんでした。
何故なら、遺伝子的な意味での私の父親は名の知れた政治家だったからです。

 母が出会った時、彼には既に家庭がありました。
つまり、私の母は愛人で、私は愛人の娘として生を受けたということです。

 政治家の世界では、権威の象徴として愛人を囲うのはごく当たり前の事ですから、専門の弁護士なんかもいて、別段問題も起こらない。
 ドラマのように、本妻と愛人が争うなんてことはほぼありません。

 その父親が、母と私を愛していたかどうかは分かりません。
ただ、物心付いた時から重い病気に苦しんでいた私にとって、そんなことどうでも良いことでした。
 私は一度に多くの悩みを秘めていられるほど器用な人間ではありませんでしたから。

 むしろ、政治家の父親を持ったおかげで小児疾病専門の病院に入り、最高の治療を受けられたのだから、感謝しなければならないと思っています。
 尊敬は出来ないけれど。


 その頃の私は、とある病院に入院していました。





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