大海の一滴

プロローグ （KAMISAMA）

　神様は仰った。

「また間違えた」

　それからこうも付け加えられた。

「良くあることだ」

　神様の声は聞こえるというよりは、細胞に響く感じがした。

　温かい手が伸びてきた。人間の手に似ているなと思った。

「鳥の場合は鳥の姿に、蟻の場合は蟻の姿になる。つまり、自らが親しみを覚えていた形に見えるのだ。およそ人間に限って言うなれば、目に映るもの全てが必ず真実足らざる。電気信号が脳へ伝わり、像を結ぶまでの間に、自己の都合に合わせて修正が加えられるからである」

　神様の仰ることは、なかなかに難しい。