大海の一滴
何故タツユキ君の名前が入っていないのか。
とか、どうしてあんまり接点のない麗ちゃん先生の彼氏が候補になっているのか。
とかいう疑問は、とりあえず聞かないことにした。
私は、神妙な顔で、一つの名前を指差した。
「この、赤い○で囲んだ人にします」
「ふむ。理由は?」
「なんか、一番しっくり来るかなと思いまして」
「なるほど。おお、そうだった。もしお前が望むのなら器を交換することも可能である」
「と、言いますと?」
「要するに、なりたい姿に変えてやっても良いということである」
「なんと!」
神様というのは、本当に本当に寛大である。
願わくば、そういう重要な話は最初にしていただければ幸いだ。が、それは罰当たりな話なので黙っておくことにした。
「あの、神様。もう一人だけ、条件付きで候補者を付け加えてもいいでしょうか?」
私はおずおずと尋ねた。
「出来る時と出来ない時があるが、とりあえず話してみよ」
神様は本当に寛大なのだ。
そして心なしか、神様の顔がワクワクしているように見える。
私は神妙な顔で神妙に頷いた。
「条件は愛です。そして、候補者の名前は……」
暗くなった窓の外にちらりと視線を流し、薄暗い卵形の照明の下、私は怪しく微笑んだ。