大海の一滴
「でも、結構散らかっていたわ。あなたの整理整頓は雑なんだもの」
「そおか? 部屋は綺麗だった気がしたんだけどな~」
(やっぱり、オレが掃除してたんだな)
それにしても、たった一週間美絵子がいないだけで、随分長い間会えなかったような気がしてくる。
「?? 美和は?」
夕方過ぎになるとご飯ご飯とはしゃぐ美和の姿が見当たらない。
部屋で遊んでいるのだろうか。
「あの子、またマリちゃんのお家にお泊りに行ったわ。お兄ちゃんのタケシ君が優しくってかっこいいんですって」
困った子ね。と美絵子が呟いた。
達之はギクリとなる。
最近、週末になると美和はいつも友達の家に遊びに行っている。
「まさか、付き合ってるとかそういうんじゃ……」
「大丈夫よ。タケシ君にはアリサちゃんって言う同級生の彼女がいるから」
「そうか。まあ、美和はまだ小さいしな」
「過保護ね。昔のあなたからは考えられないわ」
「そおか?」
「そうよ。昔はもっと向こう見ずでアウトローな感じだったわ」
エビチリを突付きながら考える。
確かに中学高校くらいは無茶したり、変にカッコつけたりもしていたが、大学入ってからは、どっちかっていうと、ワイワイやってた気がするけどな。
……それにしても。
「なあ、アウトローって古くない?」
「え? ふふ」
美絵子がハンバーグを突付きながら微笑んだ。
(??)
一瞬、美絵子が別人のように見えた、気がした。