大海の一滴
この状況下できっぱりと言い放ったタツユキ君に敬意を表して、私は今までで一番魅惑的に微笑んだ。
「ふふ。さすがはタツユキ君。私の見込んだ男だわ。だけどもう、決まったことなのよ」
「決まったこと?」
いぶかしむタツユキ君の顔もまた、なかなかである。
私はもう一度タツユキ君の頬に手を当て、それから頭を撫で、彼を眠らせようとした。
私は愛する人には寛容なのだ。
「大丈夫よ。あなたが眠っている間に、全て終わるわ」
けれどそこは私の見込んだ男。タツユキ君は、勇敢でもあった。
「そういうわけには行かない」
タツユキ君は強く優しく私の身体を押しのけて、熱い瞳を投げかけながら言った。
「君は、さちちゃん。だろ?」
驚き目を見開く私。