大海の一滴
「心配ご無用。波紋は最終的になだらかになるもの。と、言うわけでお前に特典をあげている間に、どういうわけか……うほん。滞りなく事は運び、魂と器の需要と供給のバランスを正常に戻すことに成功したのである」
ここへ来て、実は神様はテキトーなのではないか? といった疑問が湧いてきたが、やはり罰当たりなので気が付かない振りをすることにした。
(ではもう一つ、私はこの後どうなるのでしょう)
出来れば海の泡にはなりたくないのである。
「うむ。お前が望むなら、新しい器の中に入れてやっても良いぞ」
(なんと!)
やはり神様は思慮深く寛大である。
なので私は寛大ついでに、神様にお願いをしてみることにした。
「言うてみよ」
(出来ればそこそこお金持ちで愛がいっぱいで、それから妹というものになりたいです)
「お客様、それなら良い物件がございます」
神様は商売上手でユーモアにも優れている。
「母親の名前は、美月愛香。第一子、つまり姉にあたる子供の名前は愛美。名前からして愛だらけの家庭だ。それに人間で言うところの、そこそこ金持ちだ。愛香のお腹で既に器は完成しつつある。その器の性別は女。つまり、その器に入れば愛美の妹になる。いかがですか?」
大変偉そうな神様の接客に私は重々しく頷いた。
身体が無いので頷いたつもりになった。
(是非その物件でお願いします。それで、私がその器に入るのは、いつでしょう)
「今すぐだ。既に手続きは取ってある。それから、もうお産は始まっている」
(なんと!)
神様は用意周到で大変急なのである。
(すみません。やっぱり最後にもう一つだけ)
私には聞きたいことがあった。