大海の一滴
初恋の君、名前はたっちゃんと言いました。
私はずっと彼のことをたっちゃんと呼んでいたので、本名が分からないのもまた、残念です。
たっちゃんは、私より二歳年上でいつも私の面倒を見てくれる、優しいお兄ちゃんでした。
私は、将来たっちゃんのお嫁さんになりたいと、密かに考えていました。
実は、今でもそういう妄想をします。
恥ずかしいのでこれは二人だけの「秘密」です。
私は妄想します。大人になって、たっちゃんと結婚して、可愛い赤ちゃんを生んで、時には夫婦喧嘩なんかしてみるのもいいかもしれません。(でも原因が「浮気」だったら許せる自信がありません)
でも、そんな日はきっと訪れないのだろうと思います。
私の「選択肢」はただ一つ、この病院でひっそり息を引き取ること。
不治の病と闘い「敗者」となった私の人生の「結末」は、もう決まっているのです。
そして、その日が近いことも私は知っています。
そこで、私はその人生に「報復」すべく、あなたにお願いがあるのです。
どうか、私の代わりになっていただけませんか?