大海の一滴
「例えば、青空に真っ赤な色をした「A」が浮かんでいたとする。純粋な人間の子供ならば、間違いなく認識できるその形と色が、知識を重ねた大人には捉えられなくなる」
(…………)
「彼らはまず、空にアルファベットが浮かぶ事実を信じられない。すると、ある者にはアルファベットに似た白い雲に見え、また他の者には、真っ赤な丸い夕日に見えるのだ」
「時間や空間といった概念もまた然り。」
「もちろん、多少例外も存在する。私の実験によれば、純粋な大人というものもいる」
心地良い。
身体中に響くこの声も、手の温かさも、狭いような広いようなこの空間も何もかも。
「とにかく、お前には後ほどチャンスを与えよう。幸い、まだつながりも残っている。それまでは、ゆっくり休むがよい」
意識が……
~~~ 遠のいて行く ~~~