大海の一滴
陰謀
ひそかにたくらむ悪事。また、そのたくらみ。「―を企てる」「―に加担する」
法律で、二人以上の者が一定の犯行行為について計画・相談すること。{小学館 デジタル大辞泉引用}
策略
自分の目的を達成するために相手をおとしいれるはかりごと。計略。「―をめぐらす」{小学館 デジタル大辞泉引用}
策略家
巧みに策略をめぐらす人。また、駆け引きのうまい人。策士。{小学館 デジタル大辞泉引用}
と、言うことだそうな。
ある日、かおりちゃんが唐突にやって来て言った。
「さっちゃんも大変だよね」
「……??」
「私もさあ、ヒロ君の事で結構大変だから分かるんだ」
「男に好かれるといろいろあるよね~」
「ほら、一応ヒロ君ってまあちゃんの彼氏って事になってるじゃん」
「でもヒロ君って、実はあたしの事が好きだから、まあちゃんには気を使うんだよね」
「モテるって、結構つらいよね」
「それにまあちゃんって、自分が一番ってところあるじゃん。だからさ~」
キーンコーン、カーンコーン。
「あ、じゃあ後でね」
かおりちゃんは去って行った。
彼女の話の中で、わかったことが一つある。
どうやら、かおりちゃんは自分のことを『私』と呼んだり『あたし』と呼んだりするらしい。
それにしても今日は蒸し暑い。
そう言えばセミがちらほら鳴く季節である。
なのに朝から雨が降ったり止んだりしている。
なるほど。
これが俗に言う「異常気象」と言う奴か。
そして次は苦手な算数の時間だ。取り合えず溜息を付いておこう。
「それでは、プリントを配るので前から順に回して下さい」
麗ちゃん先生が細長い指でプリントを数え、前列の机に渡して行く。
それは、どんどん後ろに送られてクラス全員に行き渡った。
「せんせーい、今日はピッタリだね~。どうしちゃったの?」
かおりちゃんの大声にクラスのみんなが笑った。いつもなら、クラスのリーダー、渡辺さんのセリフである。
何故、今日はかおりちゃんなのか。
「先生だって、みんなに負けていられないもの」
麗ちゃん先生は引きつり笑いをした。
リーダーの渡辺さんは今日、風邪で休んでいるのである。