大海の一滴
第四章 ~悩み~

REIKO


 遠くの小さな海に、もこもこと入道雲がかかっている。

 カラン。
 タンブラーを回して氷の音色を聞きながら、麗子は目を閉じた。

 深く息を吸い込む。

 ジリジリ熱い空気の中に、独特の湿り気と匂いを含んだ潮風の姿をほんのり感じられる。


 休日の昼間、ライム入りのペリエを片手にベランダから海を眺めるのが、このところの麗子の日課となっている。

 最近図書館へ行く気が起きない。

 ヨガ教室も随分前から休みがちになっていた。


 コクリ。少しずつペリエを味わう。


『ジンジャーウォッカ、オレがいなくても飲んでいいんだよ』

 この間、一哉にそう言われた。


 けれど、麗子一人ではアルコールに手を出す気がしない。

 昼間は特に。

 何となく、悪いことをしている気分になるからだ。

 そんな真面目な自分に、嫌気が差す。

 
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