大海の一滴
 金銭
 貨幣の総称。かね。ぜに。「―に細かい人」「―感覚」。金で鋳造した銭。金貨。 {小学館 デジタル大辞泉引用}
 下接語 
 有り金、裏金、隠し金、偽金、端金、無駄金。

 である。

 只今の所持金、五百二十三円。
 それが私の全財産。
 有り金で、隠し金で偽でも裏でもないけれど無駄金した結果の端た金だ。

 アリサちゃんは言った。
「おばあちゃん家に行くと貰えるよ」

 でも、おばあちゃんは病院で入院中だ。

「じゃあ、お父さんとデートすればいいよ」
 それはちょっと難しい。

「ならカツアゲしろよ」
 タケシ君が割り込んできた。

「サイッテー」
 と、アリサちゃん。

「なんだよ、男はそんぐらいするんだよ」
 と、タケシ君。

「じゃあ、あんたもした事あるんだ。先生に言いつけよー」
「ちげーよ、この前ニュースでやってた」
「なにそれー、あんたバカじゃん?」
「おめーに言われたくねー」

 キャー、キャー、ワー、ワー。
 と言った効果音をつけて、二人はじゃれながら去って行った。

 五百二十三円。
 五百円はいいとしても、二十三円は曲者だ。

 消費税は五%。
 つまり、百円に付き五円の消費税がかかるのだ。
 もし五百円のものを買うとしたら、プラス二十五円必要だ。
 けれど二十三円しかない。
 惜しくも二円足りないのである。
 四百円のものを買うとすれば、消費税は二十円。
 すると百三円も余る。百三円。
 昔なら十円のウマイ棒が十個も買える金額である。

 宵の金は持ち越さないのが私のモットー。

 出来るだけ使い切りたいものだ。

 こんな時、タケヒロ君と動物園に行かなかったら、とか考えたくなる。
 が、その考えは良くない。過ぎ去った日のことを思い出すのは、寂しい人間のすることなのだ。
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