大海の一滴
「先生は、高橋さんの運動靴が無くなってからみんなに知らせるまでの間に、高橋さんのロッカーをくまなく探しましたが、そこにはありませんでした」
ごくり。これは、私の心の音。
「渡辺さん、本当はどこでそれを見つけたのですか?」
みんなが渡辺さんに注目。
「それは……」
「渡辺さん、水野さん、秋山さん、津田さん。あなたたちは、ここへ残って下さい」
ざわざわざわざわ。
「他の皆さんは、体育館へ行って自由に運動していて下さい。今日は用具室のどれでも使って構いません」
「マジ? やった~」
「行こうぜ~」
どどどどどど。
子供は単純である。
「さち、行こう」
アヤネちゃんとアリサちゃんが言った。
私はひそかに、愛美ちゃんのママの話を思い出す。
シンデレラと人魚姫について。