大海の一滴
「大人になるには、運命を切り開く必要があって、そこには沢山の決断が待っているの。沢山の決断は、人を大人に成長させるけれど、同時に綺麗で素敵なものばかりを追いかけてはいられなくもするのよ。シンデレラは沢山の決断をして大人になったけれど、人魚姫は綺麗で素敵なものを追いかける少女のままでいることを望んだ。きっと、そういうことではないかしら」
その日のクッキーは、ビターでメルヘンの味がした。
愛美ちゃんのママはぽってり赤い唇で魅力的に微笑み、こう付け足した。
「でも、私はどちらのお姫様も大好きよ」
麗ちゃん先生は、大人の女でシンデレラなのだ。
そして、私がシンデレラになるためには、運命を切り開いて、沢山の決断をしなければならない。
そこには『綺麗で素敵ではないもの』が待っている。
シンデレラか人魚姫か。
決断の時は、近い。