ラバ―ズΧクロス
第1章
起side葉月
西日が差し込み始めた図書室で、私は戸締まりをしていた。
電気を消し、入口に手をかけた瞬間校内にチャイムが鳴り響く。
引き戸の鍵穴に少々レトロな鍵を差し込む。
カチリと乾いた音を立てた扉に背を向け、私は少し早足に歩き出した。
向かうは、図書室の対角線にある柔道場だ。
柔道場は校舎は東側の隅っこにある、雑木林の中に位置する。
紅く色付き始めた木々の間を通り抜ける頃には、私の息は完全に息切れで荒くなっていた。
「はぁっ…はぁっ…」
柔道場の入口の前で、息と髪を整える。
そして、少し躊躇しながら畳の匂いのする扉を開けた。
「し、失礼します…」
その瞬間、白い胴着を着た十数人の部員の視線が突き刺さる。
うぅ~…。
何度きても慣れないなぁ~、この視線。
思わず、体を小さくする。
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