ラバ―ズΧクロス
起side圭子
「た~だいまぁ~…」
中身が溢れ出しそうな買い物袋を2つと胴着の入ったスクバを担ぎ、あたしは玄関に倒れ込んだ。
キッチンの方から、先に帰っていたお母さんの声が近いてくる。
「まぁ、なに?情けない声だして」
誰のせいだ、誰の。
のろのろとロ―ファ―を抜きながら、はぁっと溜め息をつく。
すると、いつも間にかあたしの後ろに立っていたお母さんが悲鳴をあげた。
「きゃああっ!!ちょっと、圭!!何やってんのよ!!」
あたしは、悲鳴の理由が分からず、平然と答えた。
「ロ―ファ―を抜いでおりますが?」
と、あたしの頭がスパ―ンと乾いた音をたてた。
「いった!!何すんの!!」
どうやらお母さんがスリッパであたしの頭をはたいたらしい。
実際には痛くも痒くも無いのに、反射で痛いと言ってしまう。
「袋を床に置かないでよ!!卵が割れたらどうすんの!!」
久しぶりに見るお母さんの迫力に、少し怯んでしまう。
「ご、ごめんなさい…」
あたしの謝罪の言葉を完全スルーして、お母さんは買い物袋を漁り始めた。