ラバ―ズΧクロス
「あんた髪はねてるわよ。ほら」
ずいっと櫛を差し出してくる。
「え~いいよ。学校すぐ近くだし、朝練終わったら頭洗うしさ」
「あんたね~…」
ぼやき出したお母さんに慌てて背を向ける。
こうなるとお母さんは話がとてつもなく長いのだ。
「じゃあ、行ってきまーす!!」
「あ、圭!!」
何かを叫んでるお母さんを尻目に家を飛び出した。
家から学校までの道を半分くらいまで来ると、見慣れた栗色頭を発見した。
「おっす。矢野!!」
少し驚いた顔で振り返る矢野に、ニッと笑う。
「ビックリした…。おはよ」
何故か目を逸らす矢野に、話しかける。
「今日、放課後は部活ないんだよな?」
「あ、うん。柔道場使えないからな~」
「え?なんで?」
あたしの言葉に呆れたように、矢野は溜め息をついた。
「今日は空手部が使う日だからだよ」
「あ、そうだった」
「しっかりしてよ、副主将」
「すみません、主将」
そんなやり取りでふざけ合っていると、不意に矢野があたしの頭に手を伸ばした。