ラバ―ズΧクロス
そっと顎を引き上目遣いであたしを睨む矢野から、思わず目を逸らす。
こいつ、絶対自分の武器知ってるだろっ!!
「あたしだって好きで伸びてんじゃね~よ!!どっちかって言うと縮みたいよ!!女でこんなに高いと良いことないし!!」
矢野の視線から逃れる為に、早歩きしながら勢いで言葉を吐き出した。
「あ、河野!!待って!!」
小走りで追いかけてくる矢野を無視して、更に歩幅を大きくする。
「河野、ごめんって!!」
声が慌て出したのに気づき、少しだけスピードを緩める。
焦りからだんだん罪悪感が生まれ、振り向いた。
「昼休み、ジュ―ス奢って」
なんとなく照れて、不機嫌な顔になってしまった。
でも、矢野にはそんなことはお見通しのようで、にんまりと笑った。
「うん。分かった」
その笑顔に更に気恥ずかしくなり、ぶっきらぼうにつぶやいた。
「早く行くぞ」
矢野はニコニコと笑って、まるで子犬のようについてきた。
ふと、葉月の言葉を思い出す。
―圭ちゃんは、矢野君のことどう思ってるの?―
“仲間”だよ…。