ラバ―ズΧクロス
「相変わらず、河野は人遣い荒いな~」
矢野君が苦笑いしながらもらした。
「ごめんなさい…」
思わず謝ってしまう。
「なんで沢村さんが謝るの?」
「一応いとこだし、圭ちゃんの保護者みたいなとこあるから…」
へぇ、と矢野君は目を丸くした。
「二人ともいとこ同士なんだ~。だからあんなに仲良いのか…」
納得したように頷いている矢野君が、ふと私を見つめた。
長い睫毛に覆われている、綺麗な瞳にドキドキしてしまう。
「あ…の…?」
「ん~。鼻が似てるね」
そう言って、フワッと笑った。
「………!?」
頬の温度が急に上がったのが分かり、思わず下を向いた。
「あ、沢村さんは何が良い?」
いつの間にか、自販機の前に来ていた。
小銭を取り出しながら、矢野君が振り向いた。
「あ、コ―ヒ―で…」
「お~、大人だね~」
感心したように呟きながら、コ―ヒ―を一回とミルクココアを二回押した。
「矢野君もココア?」
「あ、うん。俺甘党なんだ」
圭ちゃんと一緒だ…。
無意識にスカートの裾を握りしめていた。